プログラマーと要求分析と

内なる“怒り”が新生FFXIVを作った——不定期連載「原田が斬る!」,第6回は「ファイナルファンタジーXIV」吉田直樹氏に聞く,MMORPGの過去と未来

全文面白いのだけれど、とりわけ2ページ目に書かれている、プランナーとプログラマーの関係が興味深い。

原田氏: 「じゃあビカッ! ってなる,今業界で話題の粉みたいなやつ……なんでしたっけ?」「パーティクル?」「そのパーティクルが毎回同じのが出るのでつまんないんです」「じゃあどうしたいの?」「なんか毎回違うのが良いです」「それはランダムって意味?」「ランダムというか,すごく強いときはこんな風にボン! こっちに殴ったときはあっちにボン! って」「うーん,原田がやりたいことは分かった。じゃあ待ってて」って。で,次の日見たら,殴った方向や強さに合わせてにパーティクルが飛ぶようになっていた。

このプログラマーは、とにかく早く(現在のプロジェクトにおいて)意思確認ができるようになることを優先している。

吉田氏: ウチは「ビカッ! って感じです」なんて言ったら,「お前な,今日び,すすきのを歩いてるニーチャンだってビカッて言うぞ?」ってスゴまれましたよ。だから描けない絵で一生懸命パーティクルの話をしようとするんだけど,当時はそんな言葉すら知らなくて,また冷たい目で見られるっていう。 その代わり,分からないから教えてくださいって頭を下げたら,1から10まで全部説明してくれるんです。パラメータをいじるだけで指向性が変えられるとか,エントリーしてるエフェクトの粒のタイプをいくつも作ることによって,同じエンジンでも違った表現ができることとか。かつ,それを踏まえて発注したら,「お前がやりたいのはこうだろ?」って,発注以上のものがあがってくるんです。

このプログラマーは、プランナーが意思表現を文書で行えるようになることを(プランナーが自分のやりたいことを自分の力で正確に伝えられるようになるスキルの習得を)優先している。

両者のアプローチは異なりつつ、しかし最終的にはどちらのプログラマーもプランナーの初期のざっくりとした発言から、プランナーが本当に実現したかったことを引き出すという、要求アナリストとしての結果を出している。 往々にして、はたから見て優秀なプログラマーとは、要求分析が得意なプログラマーのことである。

原田氏: だから,僕はディレクターやプロデューサーになった当初,教育係としては苦労したんです。 あげく「プログラマーがもっと教えてあげてよ」とか言って,「えー! マジっすか?」って言われちゃう状態でした

要求分析が得意なプログラマーに甘やかされた(プログラマーに要求アナリストの役割を兼任されていた)経験があると、プログラマーと要求分析の役割は可分であるということに気づきにくいかもしれない。 好きで要求分析をするプログラマーはいるし、実際それは効率が良いのだが、その役割を明示的に与えられていない限り、プログラマーには要求分析をする義務はない。 「顧客が本当に必要だったもの」という有名な図があるが、この図は「無駄をそぎ落とした純粋なプログラマーの役割(期待すべき成果)」を正しく表していると思う。